望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

内部告発と新聞社サイト


 10年以前だが赤福の賞味期限偽装が暴かれ、比内鶏と謳いながら地鶏を全く使用していなかったことが暴かれ、ミートホープ元社長が逮捕された。不二家や「白い恋人」の表示偽装もあった。中国産食品の安全性への懸念が高まったが、日本産食品だって“怪しい”ことでは引けを取らないようだ。


 これらは、内部告発がなされていたが、行政は積極的に動かなかったという。新聞社などに情報が寄せられて明るみに出たようだが、問題のある企業行動を是正するには、勤務先や行政関係より、新聞社などへ内部告発するほうが効果的なのかもしれない。


 新聞社などへの情報提供の電話や手紙は相当多いに違いない。その中の“使える”ネタとなると、かなり絞られようし、確証を得るための作業が必須であることから、簡単にニュースとして使うことはできまいが、新聞社などにとっても内部告発は歓迎だろう。


 電話や手紙はともかく、ネット上で新聞各社はどんな受け入れ体制をとっているのか。各社のサイトを見ると、積極的に内部告発などのメールを送ることができるようにはなっていない。紙面を見ると、情報提供先としてのメールアドレスが載っているのに。おそらくイタズラや嫌がらせなどが多いと判断して、サイトは新聞社からの一方通行の場としたのかもしれないが、もったいないという気がする。


 かつてWeb2.0という言葉がよく使われた。ブログなど人々が手軽に情報発信できるようになり、情報は双方向の時代になったことを言ったものだが、新聞各社は、サイトを見る限り、Web2.0時代に対応できていなかった。サイトにメールアドレスを載せたなら、膨大なメールが送信されようし、その大半はジャンクかもしれないが、それに対応して行かなければ、新聞社はますます取り残されて行くばかりだ。


 米誌「ワイアード」のクリス・アンダーソン編集長(ロングテール論の発案者)はかつて、「テレビや新聞、出版社など大企業がメディアを独占してきた時代が終わり、メディアは三つの層に分かれる。万人向けに情報発信する従来型マスメディア、もっときめ細かい需要に応えるネット利用の商業メディア、無数のブログなど一般人によるメディアだ。マスメディアのシェアは落ちていく」とした。


 アメリカでは新聞社の苦境が伝えられ、日本では若い層の新聞離れがいわれる。ネットはますます高機能になって、情報提供の主役となり、やがて紙媒体の新聞の地位は劇的に下がろう。新聞各社は、どううまく縮小するか、どうネットに軸足を移すか模索しているが、縮小が続く。双方向性も含めてネットを高度に利用することが、従来型メディアの生き残りを左右するだろう。