望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

自給率アップの方法

 日本の食糧自給率は39%(カロリーベース。生産額ベースでは68%)くらいで推移している。フランスは130%ほど、アメリカは120%ほど、ドイツは90%ほど、イギリスは75%ほど。農水省は45%を目標としているとか。

 日本で食糧自給率をアップさせるためには何が必要か。国内産の消費量を増やし、輸入を減らせばいいと単純に思いつく。例えば小麦は大半が輸入であるから、パン食や麺食を減らし、白米中心の食事に転換するーつまり、ハンバーガーをやめ、ラーメン、うどん等をやめ、朝昼晩ともにご飯食にする。試算では、朝食を週1回、パン食をご飯食に替えれば自給率は2%アップし、昼食を週1回、ラーメンからご飯食に替えれば自給率は2%アップするという。農水省が目標とする5%アップ達成のためには、週3回、パン食や麺食をご飯食に替えればいい。

 簡単そうに見えるが、太平洋戦争終了後に日本をアメリカ農産物の巨大市場に変えてきた穀物メジャーが、「日本の食糧自給率アップはいいことですね」と座視するはずがなく、また、日本側の大手商社が簡単に輸入減少=売り上げ減少を受け入れるはずがない。マクドナルドだって、「日本の食糧自給率アップのために、当社でハンバーガーを食べる回数を減らして下さい」なんて言うはずがない。

 一方で、農業は疲弊している。農家では高齢化が進み、後継者不足に悩む。耕作放棄の荒れた土地が増えているという。10年後に農家はどれだけ残っているのか。

 国は「戦後農政の大転換」とも呼ばれる品目横断的経営安定対策を導入し、米、麦、大豆、テンサイ、でんぷん原料用馬鈴薯の5品目について、全農家が対象だった補助金支給を一定規模の耕作地を持つ農家に限定した。農家の事業規模拡大を促して収益力を強化し、耕作放棄地の増加にも歯止めをかける狙いだという。

 これに対して、小規模農家切り捨てとの批判がある。農業政策に自給率アップがどれだけ考慮されているのか知らないが、制度をいじるより「ご飯食を増やそう」とアピールしたほうが効果がありそうだ。だが政府がそんなアピールを始めるのは、大手商社等の農業参入を認めた後だろうな。

 別の問題も出てきている。中国、インドなどの輸入量が増大し、世界的に食糧需給が逼迫するという見方だ。加えてバイオマス燃料の需要拡大にともなう転作、原油高による生産・輸送コスト上昇、旱魃などの異常気象等で食糧価格は国際的に上昇して行き、奪い合いになり、日本の輸入量は減らざるを得ないと見る人もいる。つまり、日本は食糧自給の方向に動かざるを得なくなる。

 日本では破棄される食品が年間4兆円にもなるというが、そんな“飽食”はいつまでも続けられそうにない。賞味期限に過敏になるのも“飽食”だったから、なんて懐かしむようになるかもしれない。