望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ヴァーチャル・ウオーター

 マスメディアなどで、「日本は大量の穀物を輸入しているが、穀物の生育には大量の水が必要。つまり、日本が大量の穀物を輸入しているということは、大量の水を日本が輸入していることでもある」てな文言を見かけることが珍しくない。うっかり「なるほど」と頷きたくなるが、待てよ、これは何のメッセージなのか。



 日本が輸入する穀物は代金を払っているはずだが(払わなければ、売ってはくれまい)、誰かが、穀物栽培に大量の水を要したと言う。日本のマスコメディアが独自に取材してヴァーチャル・ウオーターなる概念を見いだしたとは考えられないから、欧米の誰かがヴァーチャル・ウオーターなる概念を言い立てているのだろう。そして、エコという言葉で思考停止に陥る日本のマスコミが、無批判にヴァーチャル・ウオーターと言い始める……。



 穀物の生育には大量の水が必要だ……それが、どうした? 穀物の代金は支払っているぞ。何のやましいところも日本にはない(はず)。どうやら、ヴァーチャル・ウオーターなる言葉を日本に広めようとしている連中がいて、マスコミにその影響が及んでいるらしいが、穀物とともに「見えない」水を日本は輸入していると日本人を洗脳して、何をしようとしているのか。



 考えられることとして、1)欧米の穀物メジャーが、輸出価格にヴァーチャル・ウオーター分の上乗せを狙っている、2)ヴァーチャル・ウオーター概念で日本に、世界環境に負担をかけているとの引け目を負わせる、3)CO2排出権の取引市場の次にヴァーチャル・ウオーターの取引市場を設立するため、日本を資金の出し手(カモ)にしようと「地ならし」。



 欧米企業が「水」をビッグビジネスにしようと動いていることは知られている。発展途上国などの水道供給の民営化を促し、事業を委託される(乗っ取る)と最新技術で設備を改善し、値上げして利益を得るといったやり方。払えない人々は排除される。ヴァーチャルではないウオーターがビジネスとなり、次はヴァーチャルなウオーターがビジネスになる?





 エコをうたう概念・運動には「物語」が多いようだ。ヴァーチャル・ウオーターなる概念は、エコなのかビジネスの伏線なのか現時点では判断がつかないが、妙な環境意識に駆り立てられて付和雷同しているとツケが回って来るかもね。