望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

国家資本主義

 こんなコラムを10年ほど前に書いていました(毛沢東江沢民かな?)。


ケザワ東 「世界金融危機後の世界には、いびつな歪みが生じている。企業に対する政府の束縛を嫌うはずのアメリカなどで、金融機関に公的資金が注入され、さらにはGMなど民間企業にも公的資金が注入されている。国家が資本を企業に注入するというのでは、中国と同じだ。いつまで、こんなことが続くのかね」



エザワ民 「中国の、国家統制資本主義の正しさが歴史に証明された。民間だけではこの世界的危機は乗り切れなかった。米政府が資金を注入しなかったならば、ウォール街では大手金融機関がばたばたと潰れただろうし、GMなどゾンビ化しつつあった民間企業が、間違いなく潰れて、とっくに失業率は10%をはるかに超えていただろう」



ケザワ東 「国家統制なんかクソ喰らえ、自由が大事だ!と言いたいが、世界経済が一気に二割も三割も縮小するという状況では企業に、潰れる自由だけはいっぱいある。企業側に頑張って、国家の資金などゴメンだと言って欲しかったが、物欲しげな面付きで、殊勝さを装って、公的資金を欲しがる経営者ばかり目立った」



エザワ民 「資本が自由気ままに振る舞うという自由主義は、行き着くところが、高額ボーナスを得るためには何でもやるという投資銀行などだった。社会的責任などと殊勝げに言う経営者連中もいるが、自由主義経済の矛盾が蓄積して、歴史に淘汰されつつあるというのが現状だ。中国スタイルの国家統制資本主義が、これからの世界の資本主義における基本スタイルだ」



ケザワ東 「中国スタイルと言うが、中国がオリジナルというわけではない。国家が企業を所有するスタイルは世界では珍しくはない。共産主義国家だったロシアでは、政府が重要企業を指定しているし、ブラジルなどではエネルギー企業が国有化されている。皮肉っぽく言えば、先進国になりきれない国では、国家主導の企業が大きな顔をするってところだろう」



エザワ民 「本家争いは止めておく。共産主義思想だって中国が本家というわけではないから、どこがオリジンでも関係ない。うまく利用すればいいだけの話だ。日本の3公社なんていうのも国家統制資本主義の範疇に入る」



ケザワ東 「先進国では、金融資本が膨張して実体経済を飲み込んでしまった。金融資本が要求するだけの利益を実体経済では出すことができず、金融資本は利益を出すためには何でも売買するようになった。さて、中国などの国家統制資本主義が、世界をさまよう金融資本に対抗できるのかね。今回の金融危機では中国の国有会社が結構な損失を出しているとウワサされているが」



エザワ民 「商売では先進国の企業に一日の長があるが、国家統制資本主義には資本に加えて、国家の信用と国家の強権が背後に控えている。商売のルールでうまく行かなかったなら、国家の強権でうまく行かせる」