望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





しっぺ返し

 え~、最近は数十万人の大規模なデモを見かけませんな。そういえばストライキも見かけなくなり、やがて死語になったりして。権利を主張することが日本では特別な行為という意識がまだ残っているのか、人々が何も主張しなくても権利が守られる社会になったのか(まさか、ね)。





 大量の失業者を発生させる一方で、需要不足のため低迷を続ける世界経済。新興国の需要拡大に先進国は期待をかけているようですがね、ミョーですな、自国内では中産階級を解体して格差を拡大させ、所得の低い非正規労働者を増加させているんですから。



 自国内では低所得者を増やし、購買力を低下させて内需を減らし、需要不足だからと、新興国の新しい需要に期待かける……輸出で得た金のほうが、内需で得た金より尊いのかしらね。



 企業が、固定費を減らすために非正規労働者などを増やして人件費を削減することは、それなりの合理性があるのかもしれませんがね、一国全体の経済を考えると「合成の誤謬」の一種かもしれません。個別の企業は各社の利益確保と生き残りを最優先して動くでしょうが、そうした行動が社会的にも正しいとは限りません。



 正規か非正規かという制度をめぐる議論は置くとして、自国内の労働者の収入を増やすことが内需活性化につながることは確かでしょう。日本では、巨額の内部留保を持っている大手企業が多いようで、労働者に行くべき金が企業にプールされたとも受け止められますな。



 低所得労働者を増やすと、所得が少ないから節約せざるを得ない消費者が増え、内需が低迷しているからと企業は外需に期待をかける。ところが企業は、為替レートや世界経済の変動の直撃を受け、足下の内需が低迷したままなので一層の困難に直面する……自国の労働者を大事にしない企業は、国内市場からしっぺ返しを受ける。ただ、誰も幸せにならないところが辛いところですな。