望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

これが、それです

 え~、虎は死して皮を留め人は死して名を残す、なんて言いますな。一昔前のタイガースは強かったとファンは言い続ける……なんてプロ野球の話じゃありませんよ。後世に名が残るような生き方を、人はしたいものだということのようで。



 名が残るといっても、八百長や出歯亀なんて名の残り方はいただけませんな。まあ、そうした行為が一般に行われ続けるから、そうした行為とともに名が残るのでしょうが、残すなら、やはりプラスイメージの方がいようで。



 この人は、どういう名の残し方をするんでしょうかね。マイケル・ジャクソン(MJ)。史上最も成功したエンターテイナーといわれ、ファンは世界中にいて、CDなどは驚異的売り上げだそうですな。2010年の突然の死で、売れ行きに拍車がかかり、実現しなかったロンドンコンサートのリハーサル光景などを収録した映画「THIS IS IT」も大人気だったそうで。



 その一方で、奇行やらスキャンダルなどでマスコミの餌食となった一面もありますな。突然の死からしばらくは、偉大な大衆音楽家として賞賛されていますがね、大衆の心は移り気なものですから、白人化して容貌も変わった奇人として冷笑される日が来ないとも限りませんや。



 なんでMJは白人化したンでしょうね。普通に考えれば、黒人であることに強いコンプレックスがあったということになるンでしょうが、黒人スターが珍しくない時代にあっては、コンプレックスがあったとしても、開き直って生きることができそうなもの。MJがそうしなかったのは、黒人であるという属性ではなく、自分自身の存在に肯定感を持つことができなかったからかも。



 自己否定としてMJは白人化し、容貌を変えた……そういえば何かの授賞式でMJが、子供の純真さを強調するスピーチをしている光景をTVでやってましたな。理想として子供の世界を設定し、自分を理想の世界へ移行させることで自己肯定感をやっとMJは得ることができたのかもしれませんな。もちろん、現実には存在しない理想の世界ですから、その自己肯定感も不安定なものだったでしょうが。



 子供の頃からビッグスターであり続けたMJ。名声も大金も手にしたのに、自分を愛することができず、すっかり自分を変身させた……おそらく、白人化して容貌を変えてもMJは自己否定感をなくすことはできなかったでしょうな。鏡に映る自分の容貌が変わったとしても、同じ自分であることは自分がよく知っているのですから。