望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





表情スポーツ

 カミさんが言うんですがね、「フィギュアスケートなどの採点競技は、なんかモヤモヤした後味が残る」のだそうです。若く可愛い女性の選手に少々嫉妬しているのかと思ったんですがね、男子のフィギュアなどでも同じような印象を持ったとカミさんは言いますから、嫉妬だけじゃないようです。



 「滑っている時の表情が評価されるっていうのが、絶対おかしい」とカミさんは言うんです。畳み掛けるように「表情がスポーツか?」と聞かれて返答に困り、「顔の筋肉を訓練して、動き回っている時にも毎回、同じような表情をつくるんだから、運動の一種といえないこともないんじゃないか」と苦し紛れに言うと、「それなら、百面相もスポーツか」と言い返されました。



 さらに、「表情が採点に影響するなんて、スポーツじゃなくてショービジネスのやること。おかげで、容姿もスタイルもいい人が採点上では有利になるのでしょうから、そんな選手ばかりになった」とカミさんはヒートアップ。容姿もスタイルもいいのは別に構わないんじゃないか……なんて、とても言えません。



 それでも「フィギュアスケートはウインタースポーツの人気種目なんだから、顔の表情で採点が左右されるなんて本当なのかね?」と言ってみたのですから、「絶対そうよ。みんな言ってるもの。笑顔が大事なんだって」とカミさんはすっかり信じていましてね。



 反論するわけじゃないという調子で、「笑顔は大事だろうけど、ジャンプとかステップ、スピンなんかのほうが高く評価されるはずだよ。スポーツなんだもの」とつとめて冷静に言ったのですが、「純粋なスポーツだというなら、あんなにお尻を出さなくたって、いいはずよ。ジャンプなんかを採点するだけなら、お尻を出す必要はないでしょう」と強く言い返されてしまいました。



 言われてみれば確かに、フィギュアスケートで女子選手はどうしてお尻を出すのですかね? 夏のビーチバレーならともかく、冬のスケート場で、お尻を出しているのは、確かに寒そうですものね。表情が採点に影響しているというなら、もしかして、お尻を隠すと減点される? 



 カミさんはカーリングも熱心に見てまして、ルールはよく分からないそうですがね、「うまいところに投げるものだねえ」などと言っています。それにね、カーリングでも表情のことを言っていました。「ストーンを投げる時の選手のきりりとした顔がいい」と。



 日本の選手だけでなく、各国の選手も投げる時にはいい表情をするそうです。でもカミさんは日本の選手の表情が一番いいと言いまして、「カーリングが採点競技だったら、日本チームはいいところに行けたのに」なんて言いました。時には、表情に寛大になるようです。