望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





シェアハウスの可能性

 シェアハウスとは、家を複数の人が共有して暮らす居住形態だ。個人で個室を借り、台所やリビング、風呂などは住人共用となる。不動産会社は、敷金・礼金・保証人が不要であることや、月払いの短期契約型であることなどをPRしている。



 昔の木造アパートには、シェアハウス風のものが珍しくはなかった。入居者は部屋を借りるが、部屋には水道もなく、炊事場や便所は共同。風呂は銭湯を利用する。ただ契約は長期型で、家族で住んでいる人達も珍しくはなかった。遡れば、江戸時代の長屋も似たような住まい方かもしれない。井戸や便所を共有し、各人の生活には重なり合う部分が多かった。



 住宅難の時代は過ぎ去り、一戸建てやマンションの蓄積が進んで、各人の生活が個別に完結することが当然となった現代に、シェアハウスが現れた。ある調査によると、シェアハウスを選択した理由として利用者は低家賃を最も多く挙げたという。他には「初期費用が安い」「保証人が不要」「家具などがついている」など。



 また、利用者の7割は女性だという。年齢は二十代後半~三十代前半が8割を占め、職業別では正社員が利用者の4分の1を占め、派遣、パート・アルバイト、学生がほぼ同比率だという。年収は240万~300万円が最も多く、全体の4分の1になるという。



 どうやら利用者は低所得の社会人、学生、旅行者らが主体で、個人が一時的な住居として利用するケースが多いようだ。経済の停滞が続き、低所得化が進む日本社会にあってシェアハウスのニーズは高まるのだろうが、共用に重点を置いて考えるなら、一般家庭を含めて、シェアハウスの可能性は広がる。



 例えば、家族向けのシェアハウスを想定すると、何を共有とすべきかで様々なタイプがありそう。母子家庭や父子家庭など相似する事情を抱える家庭が集まったり、一人暮らしを含めて高齢者世帯が集まったり、共通の趣味を有する人達が集まってトキワ荘的なものを形成したり。そういうシェアハウスは、住み手が主導権を持つことで誕生していくのかも知れない。個人事務所などを集めたシェアオフィスもあり得よう。



 シェアハウスの可能性とは、所有の概念からの解放がポイントだ。家具や電化製品などだけではなく、生活の場を共有することを受け入れると、様々な生活スタイルが出てきそうだ。それは、消費の対象としての生活を見直すことでもあろう。