望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





サイバー戦争は持久戦争

 日本の企業や官庁などがサイバー攻撃の対象になったとの報道が増えた。サイバー攻撃も最近始まったものではない。以前から日本はサイバー攻撃の標的になっていたようだ。狙われやすいカモは餌食になるだけだ。



 サイバー攻撃と一括りにされ、企業や官庁の内部情報を盗み出そうとするものが多いように伝えられているが、ハッカーが腕試しを行っているものや、システムに「入口」を見つけて侵入することが目的(有事に備えて?)のものなども含まれている可能性がある。



 中国では網軍という組織が常時ネット監視を行い、サイバー部隊が活動しているといわれ、アメリカはサイバー司令部を設置し、実戦部隊を本格稼働させているという。ネット環境が整備され、各種の高度情報が豊富に存在する日本がサイバー戦争に巻き込まれるのは当然だろう。



 石原莞爾もサイバー戦争は予想していなかった。石原は「最終戦争論」(1940年の講演内容をもとに42年に出版)で戦闘隊形の発展を、個人対個人の戦いから集団対集団の戦いへ、さらには航空機の誕生で3次元対3次元の戦いへと変遷して来たとし、点と点の戦いから線と線の戦い、面と面の戦い、さらには空間と空間の戦いになったとした。



 石原はまた同書で戦争を、短期型で武力重視の決戦戦争と長期型で武力以外も重要な持久戦争に分類した。第二次世界大戦が決戦戦争であり、その後の冷戦を持久戦争と見るならば、第三次世界大戦は決戦戦争となり、凄まじい破壊がなされると予想できるが、その前にサイバー戦争が挟み込まれることになった。サイバー戦争は持久戦争である。



 既に軍事の世界にインターネットは組み込まれている。各部隊や戦闘車両、航空機、艦艇はもとより兵士個々もネットで繋がり、指揮・連絡のほか情報の共有などに活用されているという。平時に、敵国のサイバー空間の脆弱性をつかんでおくことは、有事にも役立つだろう。



 オープンな空間であることが魅力のサイバー空間。オープンであるが故の脆弱性は、「悪意」にはもろい。サイバー戦争が始まっているのなら、もう後戻りはできず、サイバー戦争に備えるしかない。ただし、サイバー攻撃に備えることを口実に、日本企業や官庁が「得意」な情報隠しに利用しないように監視が必要だろう。