望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





吹奏楽ガール

 数年前に、ある地方都市で開催された市民祭りで音楽パレードを見た。市内にある高校や中学の吹奏楽部がいくつも参加して、次々と行進していたが、そのメンバーの多くが女子であることに驚いた。以前から吹奏楽部には女子が多かったのか、それとも、何かのきっかけで増えたのかは知らないが、その光景は、吹奏楽部=女子と言っても過言ではなかった。



 消防や警察、自衛隊などの吹奏楽団のメンバーはほとんど男のようだが、学校の吹奏楽部で男子は太鼓系かチューバのような大型の低音系楽器の担当が多い。体格や体力が関係しているのかもしれないが、トランペットやアルト・テナーサックス、クラリネットなど金管木管の多くを女子が演奏する。



 もし、女子が吹奏楽部に増えた切っ掛けがあるとすれば、映画「スウィングガールズ」か。あの映画では、皆で演奏を楽しむ様子が魅力的に描かれていたので、吹奏楽部への女子の入部希望者が増えてもおかしくはない。だが、映画でも部員の多くが女子だったので、あの映画が当時の学校の吹奏楽部の状況を反映しているとすると、当時から吹奏楽部では女子が多かったということになる。



 全国の学校の吹奏楽部における女子部員数の推移といったデータがあれば、そのへんの事情が明らかになるのだが、ネットで探しても見つからない。映画が切っ掛けで吹奏楽部への入部希望の女子が増えたとしても、すぐに多数を占めるまでに増えるとも考えられないので、以前から女子が多かったと見るのが妥当か。



 こうした「吹奏楽ガール」の増加が関係しているのかどうかは知らないが、ジャズ界でも女性プレーヤーが増えている。ピアニストでは女性は以前から珍しくなかったが、ジャズ雑誌を見ると、女性のサックスプレーヤーの記事や写真が増えた。日本だけでなく米でも女性サックスプレーヤーが増えているようなので、米のスクールバンドでも女子が多いのかと想像したくなる。



 表現において大切なのは個々の個性であり、性別は何の意味も持たないことは分かっているが、女性プレーヤーは男どもと異なる独自の表現ができるんじゃないかと、つい期待したくなる。何が女性独自の表現か?と問われると、返答のしようがないのだけどね。