望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ウナギの人気

 日本各地に大小様々な水族館があるが、展示対象としてウナギはあまり人気がないようだ。大規模な養殖が行われているのだから、飼育は難しくないのだろうが、ゆったり泳ぎ回るジンベイザメやエイ、サメなど大型魚や極彩色の熱帯産の魚に比べて、夜行性のウナギの観客アピール度は低そうだから、展示が少ないのかもしれない。



 ウナギは日本各地の川などに生息する身近な存在であり、また、古くから食されてきたので、コイやフナなどと同様、新鮮味がなく、わざわざコストをかけて飼育するまでもないとして展示されないのか。一方で、イワシやカツオは水族館に欠かせない存在だ。こちらも古くから食されてきたとはいっても、海中で活発に泳ぎ回る姿を目にした人は限られている。



 北洋から熱帯まで、沿岸から深海までと様々な環境に生き、バラエティーに富む海水魚に比べて、姿形や体色が地味な淡水魚は水族館では脇役でしかない。水族館のメインの大きな水槽は海水魚用で、淡水魚の「スター」といえば、アマゾン川に生息するピラルクーや電気ウナギであったりする。淡水魚のコーナが設けられている水族館もあるが、イワナやヤマメ、ウグイ、ナマズ、タナゴ、ドジョウなどと、やっぱり地味だ。



 ウナギは貪食な肉食性なので餌付きがよく、個人でも飼育しやすいという。人にも馴れるというが、夜行性なので隠れることができるように、水槽内には砂をひいたり、筒などの隠れ家を入れる。注意すべきは、ウナギは脱走しやすいので、水槽の蓋は隙間がないようにいつも閉めておかなければいけないそうだ。



 ウナギは長生きで、英国の水族館では50年以上も生きた記録があるという。ウナギの一生は完全には分かっていないらしいが、ニホンウナギは、グアム島マリアナ諸島の西側沖のマリアナ海嶺のスルガ海山付近で産卵、孵化し、海流に乗って日本にやって来て、川に入り、シラスウナギから7、8年以上かけて成熟する。成熟してすぐに海に戻るのか、川にとどまって何かの切っ掛けで海に戻るのか、そこら辺も分かっていないようだ。



 既に欧州ではウナギが保護の対象になった。ニホンウナギも減少していないとはいえず、シラスウナギが減り続けると、いつか保護の対象となり、蒲焼きもさらに高価なものになるだろう。そんな貴重な存在にウナギがなってしまうと、各地の水族館がこぞって、ウナギの飼育展示を始めるかもしれない。パンダを見るようにウナギを見るために人々が押し寄せるかどうかは分からないが。