望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





製品寿命

 ラジオとカセットテープ再生機が一体化したラジカセ。登場した頃は大人気だったという。やがてCD時代になり、CDラジカセに移行し、カセットテープ再生機能がつかなくなってもCDラジカセと呼ばれているのだから、ラジカセというのが独立した名称として定着したのだろう。



 そのラジカセの存在感はすっかり薄くなった。ダウンロードしてスマホで音楽を聴く時代になり、CDが買われなくなれば、ラジカセの必要性は低下する。おまけに、ラジオのかわりにテレビをつけっぱなしにしている人も珍しくなく、ラジオを持っていない人も多いとか。それで大震災後に、非常時の備えとしてラジオがよく売れた。



 量販店の売り場を見ると、隅のほうにラジオもラジカセも置いてあって、陳列点数もそう多くはなく、iPodなどの売り場よりラジカセ売り場が小さい量販店は珍しくない。CDラジカセの価格は数千円台からと、以前に比べれば、かなり安くなっているが、CDが売れず、ラジオも聞かれない時代には、安くても売れないのは当然。



 普及品のラジカセが2万円くらいしていた頃、「外れ」を買ったことがある。A社製で、ダブルカセットの機種だったが、1か月少々でラジオのチューニングダイアルの動きがおかしくなり、直してもらったが、数か月で同様の症状が出て、また直してもらった。1年経った頃にまた同様の症状が出、ダブルカセットの片方の扉が引っかかるようになり、もう片方はテープ送りがギクシャクとして、愛想をつかして買い替えた。



 CDラジカセになってからはS社製のラジカセに「感心」した。買ってから1年半で、まず小さな液晶画面が消えたままとなり、更に3か月ほどしてからCD再生時に音飛びするようになり、更に3か月ほどしてからCDを入れても認識しないようになった。「うまく壊れていって、買い替えを促すようにできているのだなあ」と、製品寿命を計算して作り込んだ設計(?)には苦笑して、あきれた。



 1980年代に買った小型のテレビ受像機は20年近く支障なく使うことができた。日本の電気製品が皆、数年で順次壊れていって、買い替えを促すように設計・製造されてはいないだろうが、日本製品の高品質という謳い文句にはもう、長持ちという要素は含まれなくなったのならば残念だな。