望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

二重マスクの効果

 マスクを着用する目的は、①風邪などに罹患している人がウイルスなどを含む咳やくしゃみのしぶきの飛散を減少させる、②ウイルスや花粉などが口に入ることを防ぐ、③タレントらが簡易な変装に使う、だ。①は、マスクの内から外に何かが出ることを防ぐためであり、②は外からマスク内に何かが入ってくるのを防ぐのが目的。

 ただし、マスクと顔には隙間があるので、ウイルスなどを含む飛沫のマスク外への放出もウイルスなどのマスク内への侵入も完全に防ぐことはできない。潜水マスクのように完全に顔と密着させると呼吸ができなくなるので、酸素ボンベなどが必要になる。医療用のN95マスクは密着度が高く、ウイルスなどの侵入を防ぐ効果は高いとされるが、息苦しいとも言われる。

 今回のパンデミックでは世界でマスク着用が一般化した。無症状の感染者が多く、感染を自覚しない人が日常生活の中でウイルスを含む飛沫を咳などで拡散させることが明らかになり、飛沫感染を抑止するために、誰が感染者か判別できないので全ての人にマスク着用が奨励された。今回のマスク着用は①の目的なのだが、②のウイルスの侵入を防ぐためにマスクを着用すると考えている人もいるようだ。

 スーパーコンピューター「富岳」のシミュレーションによると、吐き出し飛沫量は不織布マスクで80%カット、吸い込み飛沫量は70%カットとされる(布やウレタンなど他のマスクの効果はさらに低い。フェイスガードやマウスガードの効果は大幅に低く、吸い込み飛沫量に対する効果はゼロとされる)。不織布マスク1枚だけでも相当の効果があるようだが、更に高い効果を求めて二重マスクにする人が現れた。

 二重マスクについて米CDCが実験し、布のマスクをサージカルマスクの上に重ねた場合は空気中を漂うエアロゾルを92.5%遮断した(密着していないサージカルマスクのみでは42%、布マスクのみでは44.3%遮断)。1枚より2枚重ねたほうが遮断の効果が高いことは不思議ではないが、効果が高いほどいいのなら、次は三重マスクか?

 マスクの遮断効果が高い場合、着用者の感じる息苦しさの度合いも強い。二重マスクにして息苦しいからと隙間を開けたりすると、二重マスクの意味がない。二重マスクにする人は顔とマスクに隙間を絶対につくらず、息苦しさが遮断効果の目安と考え、いっそマスクの縁を顔に両面テープなどで密着させるべきか(窒息しないようにね)。

 マスクを着用している時間は長い。通勤通学の車両内や建物内など外出中は着用を続けなければならず、複数の人が存在する空間でもマスク着用がほぼ義務化された様相だ。二重マスクなど遮断効果を高めるほど、息苦しさを感じ続ける時間も長くなる。ウイルスに対する不安が息苦しさを我慢させるのだろうが、二重マスクでも隙間からウイルスは入ってくるので不安は消えまい。