望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





リニア新幹線

 

 東京と名古屋を40分で結ぶというリニア中央新幹線。2027年の開業を目指すJR東海が公表した走行ルートは、東京と名古屋の最短距離に沿うように走り、全体の86%がトンネルになるという。東京都や愛知県の都市部では、大半が地下40メートルより深くなるというから、乗ってすぐに仮眠でもするしかない。

 最高速度505キロというリニア中央新幹線超電導磁気浮上式で走行する。これは超電導磁石によって車体を浮上させ、走らせるという方式で、ほかに常電導電磁石による浮上方式もあるが、超電導電磁石によるリニアモーターカーは世界でも日本だけだという。



 メカニズムについて専門的な解説を読んでも素人では要点が判らず戸惑うばかりだが、ここは簡単に、車両側には強力な電磁石を設置し、軌道側に短絡コイルを設置して、反発力を利用して車体を10センチ浮上させ、吸引力を利用して走行させるという仕組みだと覚えておきたい。



 重い車体を浮上させるのだから、磁石の反発力はかなり強力だ。そんな力を生じさせるには大量の電気を消費することになり、リニア中央新幹線は鉄輪式の新幹線に比べ3倍の電力を消費するという。JRは自前の発電所を持っているのだろうが、もし電力会社から購入する量が多いと、電力料金は値上げが続くだろうから“節電”に励む必要がありそうだ。



 また、盛大に電力を消費して重い車体を浮上させるほどだから、協力な磁場が生じているだろう。もちろん乗客には影響がないように保護する車体構造になっているだろうが、ルートの大半がトンネルになっていて強い磁場の中を列車が進むという光景は、何やら超長いMRIの中を移動していくようなイメージでもある。



 建設資金や収支のことを考えなければ、超高速で所要時間が大幅に短縮されるリニア新幹線は、広大な北海道などに向いているように思うが、現実には課題が多い。リニアの軌道とともに送電網も整備しなければならず、大量の電力を消費するので運営コストがかさみ、原野の中に軌道を敷設するなら、野生生物との衝突が起きないように厳重に軌道を保護・管理しなければなるまい。



 リニア中央新幹線が大半をトンネルとし、地上走行部分もシェルターで覆うようにしたのは、運営管理面からは最も安上がりな選択なのかもしれない。リニアに乗ることは、旅ではなく移動なのだろうから、窓から景色が見えないのは些末なこと。リニアが開通したら、「旅行を楽しみたいのなら東海道新幹線を」とJRは観光路線化するのかな。