望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





次期の都知事がやるべきこと

 東京南部でマグニチュード7級の直下型地震が起きたなら、最悪で死者2万3千人、経済被害は95兆円と中央防災会議。冬の夕方などの場合で、強めの風が吹くと焼失・全壊建物が61万棟になり、都区部の5割が停電して電力不足が1週間以上続き、断水人口は1440万人。帰宅困難者は800万人、2週間後でも避難者は720万人になるという。



 神戸などを直撃した阪神大震災はM7.3で死者6434人、全半壊は約25万戸、焼損棟数は約7600棟、避難者は最大31万人超になり、被害総額は約10兆円だった。東京圏への一極集中で、阪神大震災級の直下型地震に襲われたなら、その被害は巨大になる。



 東京を襲うM7級の直下型地震が発生する確率はどのくらいあるのか知らないが、東日本大震災の影響により日本列島では地震活動が活発になったと言われるので、過去の原発事故のように「起こらない」ものとしての想定と受け止めるのではなく、「起こる」ものの想定と認識して行政は、直下型地震対策を講じるべきだろう。





 大規模地震対策は当然、大規模な東京改造事業となる。1年や2年で完了するような事業ではないし、東日本大震災で東京圏も大きく揺さぶられたのだから、早急に着手しなければならないだろう。ただ、細かな地震対策を寄せ集めるのではなく、地震に「強い」東京につくり変えようとするなら、一極集中の見直しが避けては通れない。一極集中の結果として、被害が巨大になるのだから。



 地震が避けられないとするなら、東京の各地に、被災者や帰宅困難者が一時避難でき、救護拠点ともなりうる大規模な空間が必要になる。だが都内にそんな土地は空いていないとすれば、何かをどかして土地を確保するしかない。

 例えば、山手線内から大学の移転を促し、跡地を防災公園として整備する。大地震による学生の死傷をできる限り減らすことにもつながろうし、郊外の環境のほうが学問に集中できるだろう。東大などのように被災者を収容できる広大な敷地を有するなら防災公園の機能を持たせることもできるが、敷地いっぱいに建物が建っているような大学には移転を促し、跡地を大地震対策に活用したほうがいい。



 知名度ありきで政策のことはほとんど話題にならない都知事選が続いているが、大地震に直撃されるのは都民だ。生き延びたいのなら、東京における大地震対策を都民は真剣に考えて投票したほうがいい。自分が被災者になってから、都知事選で人気投票をしていたことを悔やんでも遅い。