望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

紫外線が強い

 例えば、戦後の小津安二郎監督の映画などで会社勤め人を演じる笠智衆らは、背広姿で外出する際に帽子をかぶっていた。だが今では、背広姿のサラリーマンが帽子をかぶっている姿は珍しい。都市化が進み、地表はアスファルトで覆われ、クーラーを使用する車や建物から熱が吐き出されているので、帽子をかぶると余計に暑苦しくなったからでもあるだろうが、帽子には紫外線の直射から頭部を守る効果がある。



 太陽光に含まれる紫外線が、年間で最も降り注ぐのは6~8月だという。紫外線の強さは時刻や季節、天候などにより変化するが、一般に、太陽が高くなるほど強い紫外線が地表に届き、正午ごろが最も強くなる。薄曇りでも紫外線の80%以上が通過するというから、夏場の外出時には、肌の露出を抑え、帽子をかぶるなどの紫外線対策が欠かせない。



 気象庁の観測によると、紫外線は、北から南へ行くにしたがって多くなり、年間の紫外線量は、沖縄では北海道の2倍になる。紫外線は波長の長さにより、UV−A、UV−B、UV−Cに分けられ、UV−Cはオゾン層などで吸収されるが、UV−AとUV−Bは地表に届く。紫外線の9割以上を占めるUV−Aも肌に影響を与えるが、 日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因になったりするのがUV−B。



 日傘を差していても油断は禁物。UV−Bは大気中での散乱が大きく、屋外では、太陽から直接届く紫外線量とほぼ同じ量になるといい、地面や水面、コンクリートなどで反射もするので、紫外線に曝されることを防ぐことはできない。また、標高が高くなるにつれて紫外線量は増えるので、高原リゾートでは紫外線対策は不可欠。



 紫外線によって日焼けするのは誰でも経験することだが、紫外線を浴びた量が多すぎると肌がダメージを負い、シミの原因になったり、皮膚がんにつながるリスクがあり、眼に対しては角膜炎や白内障などの原因になったりする。ただし、紫外線を浴びることによってビタミンDが生成されるので、暗い部屋に閉じこもっているよりも、適度に日光にあたったほうがいい(おそらく、精神的にも)。



 暑くてたまらない時期にも背広を着用せざるを得ない人に、帽子をかぶることを求めるのは酷だろうが、風通しがいい服装で外出する時には帽子をかぶったほうがいいようだ。帽子には様々なタイプがあるが、紫外線対策に有効なのはツバの広いタイプ(ベレー帽などは夏には向かない)。キャップなら真昼でも眩しくはないし、ソフトやサファリタイプなどにもツバが広いものがある。



 ツバが広い帽子といえば、麦わら帽子だ。夏休みの子供たちの必需品でもあり、屋外作業にも欠かせない帽子だった。今でも数百円で販売されているが、町中で麦わら帽子をかぶっている子供を見かけることは少なくなった。かわりに、ストローハットという呼び名で、多彩なデザインの麦わら帽子が売られている。軽くて涼しそうで紫外線対策にもなるのだから、背広姿にも似合いそうだ。