望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

日本人になった

 米でライト兄弟が、エンジンを備えた飛行機の初飛行に成功したのは1903年12月17日だ。1914年に始まった第1次世界大戦では戦闘機や爆撃機が使用され、大戦終了後に欧州で、爆撃機などを改造して乗客や荷物を運ぶ民間機による空路輸送の歴史が始まった。



 民間の旅客機が誕生する以前の遠距離の移動は、時間がかかるものだった。自動車も蒸気機関も誕生しない以前なら、馬に乗るか徒歩か、船を使うしかなかった。遠距離の移動は大変な労力を要し、移動先が異国ともなると、帰る目処さえ定かではなかったろう。産まれた土地を離れて異国に行くことは、移住することと同義であったかもしれない。



 その当時は遠距離通信網もなかったから、知識や情報、技術などの伝播は、人の移動を伴っていた。知識や情報、技術を持った人が、移動先で教え、伝えてから、故郷に戻ることもあっただろう。だが、はるばる異国に行って、知識や技術などを伝えた人が、故郷に戻るのは簡単ではなかったろう。むしろ、異国に定住して、その地の人々と同化したと考えた方が自然だ。



 2014年に日本の手すき和紙技術がユネスコ無形文化遺産に登録されたが、さっそく韓国では「紙を作る技術は韓国が伝えた文化だ」とする声が出たそうな。日本では和紙と韓紙は異なるものと認識されているそうだが、報道によると、日本の文化や技術が世界で称賛されると韓国では「われわれの祖先が日本に伝えた」との類の反応が出るそうだ。



 他国の文化などを自国オリジナルのものだとする韓国の主張を「ウリジナル」と呼ぶそうで、日本絡みでも剣道、柔道、侍、日本刀、忍者、茶道、華道、盆栽、歌舞伎、折り紙、すし、みそ、しょうゆ、豆腐、そば、ソメイヨシノ、秋田犬などを、実は韓国が伝えたものだと主張するそうだ。客観的な文献、資料がどれほど伴っているのかは定かではない。



 何でもかんでも自分らに都合のいい主張ばかりする国民性だなと笑うしかないが、はるか昔には文化・技術の伝播に人の移動が伴っていたことを考え合わせると、別のことが見えてくる。



 仮に彼らの主張通りに、それらの文化・技術が中国などから朝鮮半島経由で日本に伝わったとしても、伝えた人々は日本から朝鮮半島に戻ったのだろうか。朝鮮半島より日本は温暖なので、昔の人にとっては日本の方が住みやすかっただろう。おそらく、日本に来て日本に文化・技術を伝えた人の多くが日本に定住して、日本人と同化した。



 つまり、仮に朝鮮半島経由で文化・技術を伝えた人々が過去にいたとしても、日本に定住した彼らは現在の朝鮮半島に住む人々とは切れている。大昔に文化・技術を伝えた人々は、現在の朝鮮半島に住む人々よりも、現在の日本人との血のつながりの方が濃い。彼らは日本人になった。なお、情報網や交通が発達した現在では経済関係などで、日本から韓国に多くの文化・技術が伝えられ、影響を与えている。