望潮亭通信

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ひどい落ち込み

 各国が発表した2020年4~6月期の国内総生産GDP)は軒並み大幅な減少となった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと実施したロックダウンなどにより個人消費が大きく落ち込み、観光業や旅客業、小売業、飲食業などで経済活動がほぼ停止した影響の甚大さが浮き彫りになった。

 発表された中で最も減少幅が大きかったのは英国。前期比で20.4%減と過去最大の経済減速となり、年率換算では59.8%減。英国はロックダウンなど感染拡大抑止対策の始動が欧州諸国より遅く、感染拡大が続いて経済活動再開が遅れた。GDPの約6割を占める個人消費が23.1%減で、企業投資は31.4%減、輸出は11.3%減。

 英国は当初、イタリアなどでの感染拡大にも危機感は薄く見え、集団感染戦略じゃないかとも疑われた。だが、国内で感染が急速に拡大したことで慌ててロックダウンなどに踏み切ったものの感染拡大は続き、感染者数でも死者数でも欧州諸国でトップ級になるなど対策の出遅れの代償は大きい。中央銀行であるイングランド銀行の金融政策報告書は「21年末までは回復しない」としたが、英経済がコロナ前水準に戻るには「少なくとも2~3年かかる」の見方もある。

 英国の経済落ち込みは欧州では最も大きい。4~6月期GDPの前期比減少率はドイツ10.1%(年率換算34.7%減)、フランス13.8%(同44.8%減)、イタリア12.4%(同41.0%減)、ユーロ圏12.1%(同40.3%減)と総崩れだが、これらより英国の20.4%(同59.8%減)はひどい状況だ。ちなみに米国は9.5%(同32.9%減)と感染者数、死者数ともに世界最多である割には経済の縮小度合いは小さい。

 日本の4~6月期GDPの前期比減少率は7.8%、年率換算で27.8%減。これはリーマン・ショック後の09年1~3月期の年率17.8%減を上回る大きな落ち込みで戦後最大という。マイナス成長は消費税率を10%に上げた19年10~12月期から3四半期連続で、まだ全国で感染拡大が続き人々の自粛モードが残るので経済の急回復は望み薄だから、マイナス成長が少なくとも1年間続くことは確実。

 日本経済は大きな落ち込みとなったが、欧米と比べるとマイナス幅は小さい。欧米が強制力を伴う厳格なロックダウンを行ったが、日本は政府が緊急事態宣言を出して人々の自覚を促して協力を得たため経済の落ち込みが比較的少なかったとか、感染拡大が欧米に比べて日本は軽度であったことなどが関係すると推察できるが、詳細は明らかではない。

 世界で新型コロナウイルスの感染拡大は続き、感染者は米国で540万人、ブラジルで330万人、インドで260万人、ロシアで90万人を超え、南米各国でも大幅な感染拡大が相次いでいる。感染が終息してから経済活動再開を本格化するのが望ましいだろうが、終息のメドは立たず、経済活動を再開しなければ総倒れになる。感染拡大が続き、感染者や死者の増加を織り込んで各国は経済再開を進める。個人は自衛するしかない。