望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

日本に157万人超の難民

 日本の人口は1億2711万人(2015年の国勢調査)だが、ドイツは約8100万人なので、日本の人口はドイツの約1.57倍になる。人口増加率は、2005〜2010年が日本0.2%、ドイツはマイナス1.0%、2010〜2015年は日本がマイナス0.7%、ドイツ0.3%と、両国ともに人口増加は頭打ちだ。

 日本の人口を都道府県別に見ると、人口が多いのは東京(1351万人)、神奈川(912万人)、大阪(883万人)、愛知(748万人)、埼玉(726万人)、千葉(622万人)、兵庫(553万人)、北海道(538万人)、福岡(510万人)、静岡(370万人)の順で、この10都道府県の合計は7217万人で総人口の56.7%を占める。

 ドイツは2015年、100万人を超す難民・移民を受け入れた。といっても、その全員がドイツに移住できるわけではなく、難民申請をしても審査があり、経済移民は帰国させられる。が、すぐに審査の結果が出るわけではなく、難民・移民は各地の自治体に移管され、用意された滞在施設で暮らしながら審査結果が出るのを待つ。その間の生活は自治体が支援する。

 人口8100万人のドイツに100万人以上の難民・移民が流入したということは、人口が1.57倍の日本に当てはめれば157万人以上になる。日本でも自治体に振り分けるとすれば、人口数上位の都道府県には多く割り振られることも想定される。大都市を多く含む上位10都道府県で157万人のどれだけを引き受けることができるだろうか。

 日本に157万人以上の難民・移民が押し寄せると、どういうことが起きるか。数年前のドイツは、その混乱ぶりを見せてくれた。人口が増えない中で、将来の貴重な労働力になるからとドイツでは難民・移民の受け入れに好意的だったともいうが、実際の対応に追われる自治体からは政府に対する批判が出た。

 さらに難民・移民が、同情すべき保護の対象の弱者で、おとなしく施設内で生き延びるだけという役割に甘んじているはずもない。難民・移民は欧州人と対等の権利を持つ人間であり、それぞれに考えや主張もあれば欲もある。だから集団暴行事件も滞在施設内での犯罪なども起きるのは当然なのだが、可哀想な人々というイメージだけで難民・移民を見ていた人々には、受け入れられない現実か。

 欧州が難民・移民を受け入れているから日本も前向きに受け入れるべきだなどという「欧州を見習え」式の議論をする人には、ドイツの混乱の様子がいい教訓になるだろう。破綻国家から逃れて来る人々を人類愛を発揮して支援することは素晴しいが、他人の生活を丸ごと引き受けるには、それ相応の覚悟を要する。ヒューマニズムに酔って高揚しても、酔いはやがて醒めるものだ。