望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

5%の支持率

 自由な選挙により選ばれた議員が国政を担うという民主主義社会では、選挙戦の最中が最も政治家が高揚し、輝いている期間かもしれない。落選すればタダの民間人に戻るしかなく、運良く当選したって、いざ国政を動かそうとしても思うようには捗らず、人々の期待値が高ければ高いほど失望も大きい。すぐに「結果」が出るはずもないので、ますますクスんでいるように見えたりする。

 だから、期待が失望に変わるにつれて支持率は下降していき、コアな支持層プラスα当たりで下げ止まる。コアな支持層とは所属政党の支持者や候補者個人の熱心な支持者であるから、よほどの失態でもなければ離れることはないだろう。そうした支持者に支えられて政治家は、世論調査で支持率が下がろうとも国政を担い続ける。

 さて、支持率が急降下し、5%なんてことになったなら非常事態だ。主権者に見放されたと言ってもいい支持率なのだから、「信なくば立たず」ということで、辞任の時期を探し始めることになる。支持率なんて瞬間風速みたいなもので、また支持率は盛り返すと期待して居座り続けると、それが反感を高めることになったりするから、支持率というものの実態は読みにくい。

 5%の支持率でも辞任せずに政治家で居続けるには、第一に、国政が停滞することを気にしないこと、第二に、どんなに批判も受け流し、第三に、主権者のほうを見ないようにすることが必要だろう。それには素質が要る。選挙で主権者と向き合わざるを得ない民主主義国の政治家にも、そんな素質を持った政治家が紛れ込んだりしているが、他の政治家に辞任に追い込まれるのが一般的だろう。

 数年前に、韓国の世論調査で朴大統領の支持率が5%に急落し、政権発足後の最低となった。不支持率は89%というから、辞任要求を突きつけられているようなものだ。世論調査の支持率が「正しい」判断かどうかは歴史に任せるしかないが、あまり見かけない支持率5%という数字は興味深い。

 飲食店なら、顧客の支持率5%で営業を続けるには高級店になるしかなく、それにふさわしい料理を提供し、店構えも高級感を出さなければならないだろう。大衆料金の飲食店が、5%の客しか獲得できなければ維持していくのは簡単ではない。民主主義国では主権者は1人1票なので政治家は誰もが大衆政治家であり、誰も「高級」政治家にはなれない(政治家本人は高級な政治家を自認したがったりするが)。

 5%の支持率は楽天的な政治家なら「まだ5%ある」と考え、前向きになる……はずもなく、与党内からも公然と批判が出てきて、官僚の対応が鈍く動かなくなったり、遠慮していたマスコミは何でも批判のネタにするなど厳しい現実に直面せざるを得ない。支持率5%の政治とは何か、どんな混乱をもたらすのか、その実例を韓国で見た。