望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

共同経済活動

 北方4島や竹島尖閣諸島で日本の領有権が脅かされているが、状況は異なる。尖閣諸島は日本が実効支配していて、中国が定期的に艦船を「パトロール」させるようになったものの、中国人が上陸して経済活動を行うことは防いでいる。北方4島はロシアが、竹島は韓国がそれぞれ実効支配し、日本人が上陸して経済活動をすることを阻んでいる。

 仮に、中国の要求に応じて日本が、中国政府と尖閣諸島における共同経済活動について協議を開始すると決めたなら、それは日本にとっては大幅な譲歩となる。それまで中国人や中国企業が上陸できなかった尖閣諸島で経済活動ができるようになれば、中国側にとっては大きな前進だろう。中国なら、多額の経済協力プランと引き換えでも尖閣諸島へのアクセスを実現できれば大喜びするかもしれない。

 仮に、日本の要求に応じて韓国が、日本政府と竹島における共同経済活動について協議を開始すると決めたなら、それは韓国にとっては大幅な譲歩となる。それまで日本人や日本企業が上陸できなかった竹島で経済活動できるようになれば、日本側にとっては大きな前進だろう。

 尖閣諸島竹島に設定を変えてみると、日露で数年前に合意した内容は日本側にとって一歩前進であることが見えて来る。法的基盤など枠組みを巡って難題が残っているため、実際に共同経済活動が動き始めるのか不透明だが、ロシアが協議に応じ、平和条約締結に向けての交渉にも前向きであるのだから、機会を逃す必要はなかろう。

 北方4島を実効支配し、日本との協議に応じる義務はなかったロシアを、協議に引っ張り出したのだから日本にとっては得点であり、失点はない。日本が実効支配している尖閣諸島に中国を呼び込んだのなら、それは日本の実効支配を揺さぶる行為となり、竹島に日本を呼び込むことは韓国の実効支配を揺さぶることになる。北方4島に日本を呼びこむことに同意したことで、ロシアの実効支配は万全ではなくなった。

 外交に関してはタフなロシア相手に日本は、主張を曲げず、かつ柔軟に交渉していく手腕の見せ所となる(あまり期待しないほうがいい?)。冷戦終了後は米に従うだけだった日本外交が、ロシア相手に局面を動かすことができたなら、独自外交の大きな一歩であり、日本外交において冷戦構造からやっと抜け出す一歩となるかもしれない。