望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

世界で大規模な山火事

 オーストラリア南東部で11月から山火事(森林火災)が猛威を振るっている。100カ所以上で発生した火災は強風により燃え広がり、合体したりして規模を拡大、シドニーに迫っているという。すでに165万haが焼失し、700戸以上の住宅が被害を受け、死傷者が出ている。焼け死んだコアラも多いと伝えられる。

 今年のオーストラリアは干ばつに見舞われ、乾燥していたことから、毎年のように発生する山火事(森林火災)が多発し、強風に煽られて燃え広がった。報道によると、ニューサウスウェールズ州消防局の副局長は、消防隊は住民を避難させ、火災が発生しやすい乾燥した気候と強風が静まるのを願う以外にできることはないと述べたそうだ。

 大規模な山火事は10月に米カリフォルニア州でも発生していた。約4万haが焼失し、州知事は州全域に非常事態を宣言した。20万人以上が避難を強いられ、セレブの豪邸を含む多くの住宅が被害を受けた。同州では昨年も大規模な山火事が発生、15万世帯が焼失、86人が死亡した。

 同州で大規模な山火事が多いのは、乾燥した気候に季節的な強風が加わって小さな山火事がたちまち大規模化するためだという。昨年の山火事は、電力大手PG&Eの送電線など老朽化した設備が火元になったと見られ、最近、被害者らと総額135億ドルの損害賠償で和解した。また、山火事の再発を防ぐためにと送配電網の稼働を止める計画停電を同社は繰り返している。

 6月にはスペインのカタルーニャ地方で大規模な山火事が発生、6500haの森林が焼失し、7月にはポルトガルで8500haが焼失する山火事が発生した。報道によると欧州では18年、計120万haが山火事で焼失し、死者は100人以上になるという。8月には南米アマゾンの熱帯雨林で3万件以上の火災が発生したが、こちらは違法な伐採や焼き畑などが原因と見られている。

 干ばつによる乾燥や高温の気温、強風などが山火事の大規模化を促進しているようで、地球温暖化によって山火事が増えているとの解釈が珍しくない。だが、山火事の4%が自然発火で、残りの96%は人間が関わっているとの報告がある(WWF)。都市への人口移動は世界的な傾向で、放棄地が増えて管理されない森林などが増えたことの影響もあるという。

 森林は大気中のCO2を吸収する機能があり、アマゾンの熱帯林が固定している炭素は推定900億~1400億トンで世界中で人為的に放出される温室効果ガスの9~14年分に相当する(WWF)。だが、山火事(森林火災)は大量のCO2を大気中に放出するので、温暖化論者の説に従えば、山火事は温暖化を加速することになる。

 過激な温暖化論者なら「CO2排出増加を防ぐため、世界各地で発生する山火事の発生を阻止しろ」と主張しそうなものだが、山火事(森林火災)は不可抗力と見られているのか、そんな声は聞こえてこない。むしろ山火事(森林火災)の原因を温暖化と結びつけることで、温暖化の危機を言い立てる材料に利用しているように見える。