望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

中国のジェダイ

 「スターウォーズ(SW)」の世界で銀河帝国の再興を目指すファースト・オーダーを、中華民族の復興(中華帝国の復興?)を目指すという中国に見立てると、類似点がいくつかある。例えば、最高権力者の存在(中国では「核心」)、最高権力者の独裁を許容する組織、力による支配などだ。

 構成員の多様性が劣ることもファースト・オーダーと中国は似ている。レジスタンス側には様々な人種や宇宙生物が混じっているが、ファースト・オーダー側は白人主体で、司令部からは様々な形態をした宇宙生物は排除されている。独裁支配だから中枢が均一化するのかもしれない。

 両者が似ているのは、軍事組織の論理で構成されているからだろう。最高司令官や司令部の命令に部下が異論を唱えたり、反論することを許せば、軍事組織としての統率が乱れる。だから、宇宙で戦争をしているファースト・オーダーが軍事組織の論理で動くのは理解できるが、戦争をしていない現在の中国が軍事組織の論理で動くのは奇妙に見える。

 中国が軍事組織の論理から脱却できないのは、中国共産党一党独裁を維持しなければならないからだ。軍事組織は基本的に上意下達だ。戦略などを決めるために参謀らが討議し、決まった方針に基づいて兵に一方的な命令が与えられる。下級兵士も人間だからと意見を求められたり、下級兵士が異議を唱えることは許されない。

 平時における軍事組織的な構造は、中央(司令部)の独裁を維持し、異論を封じ込めるためには好都合な組織形態だ。選挙ではなく武力で政権を握った中国共産党にとって、独裁を持続するためには「平時の民主主義」ではなく戦時体制を持続するしかないだろうから、軍事組織の論理を放棄できない。

 中華民族の復興を目指す中国がファースト・オーダーなら中国内のレジスタンス側は、自由や民主を求める中国人と、抑圧されているチベット人ウイグル人、モンゴル人らとの共同戦線ということになろう。多様な人々が広く結集しなければ、中国共産党の独裁を崩すことは難しい。しかし、そうした共同戦線の構築の機運は見えない。個別の運動はいろいろあるが、まとまらない。

 共同戦線を構築するにはSWにならうと、中国にもジェダイが必要なのかもしれない。ジェダイといっても念力で物体を動かす能力は映画の世界のことであり、中国のジェダイに必要なのは、自由と民主を求める強い意志と、志を同じくする人となら誰とでも連帯できる柔軟さだろう。中国のジェダイは、フォースではなく中国の民主化が可能だと信じる人で、誰でもなることができるはずだ。